すべての花へそして君へ①
――幸せにしないなら、俺がもらうぞ。
「はは。……うん。もちろん。十分わかってる」
「ならよかった」
アキくんが想いを溜めないで、あいつには言えなかったことを言ってくれて。……よかった。
ポンポンと叩いたあと、ゆっくりと立ち上がったアキくんから、何故かふっと小さな笑いが漏れる。
「言ってはいないが、そんなの葵もわかってるだろうし、俺は奪う気満々だ。父さんからの許しも得ている」
「え。一体何の許し?」
「ん? 葵を嫁にもらう許し。葵が結婚をするまで、俺は葵を諦めない」
「えー……」
長い。そこまでオレは、ずっと気を張り詰めて守っておかないといけないのか。……頭が痛い。
「だからまあ、急いては事をし損じるが、早いに越したことはないとも言う。あとは時は金なり?」
「え?」
立ち上がったアキくんの表情は、逆光でハッキリとは見えなかったけど。
「一日でも早く、世界で一番幸せな者同士になれることを、俺は祈ってるよ」
そう言って立ち去った彼の背中は、めっちゃくちゃ眩しく見えた。
「あー……どうしよ。みんなイケメン過ぎでしょ……」
そんなセリフさえも、彼にはしっくりきていて。それがすごくかっこよかった。
「……オレ、は……」
あんなセリフ、言えるか? もちろん答えは否。……それでも。答えはもう、決まってる。
(世界で一番? ……そんなの、宇宙で一番幸せにしてやるに決まってるじゃん)
どこかへ行ってしまったあいつの姿を瞼の裏に見つけ、そう心で呟く。
いつかは言えると。いつかは言うと。……心に決めて。