すべての花へそして君へ①
うちのがご迷惑をお掛けして
(三番バッター……? 意味がわからないぞ)
早めに風呂をいただき、オレンジ色を落とす。首にタオルを巻き、すっかりリラックスモードのオレは今、会場外のホールの長椅子に座って、画面と睨めっこしていた。
九条から変なメールが来た。意味不明だ。
(授業は……確か野球じゃなかった気がするし)
意味がわからん。
メールの内容が全くわからず、恐らくオレの頭の上には、見えていたら疑問符が飛び交っているだろう。オレがバカなのか? いや、こんなややこしい内容を送ってくる奴が悪いだろ。
そうして、腕を組み首を傾げ、メールの内容と格闘すること30分。
「……あ! ここにいたんだね、レンくん」
「あ。……あおいさん」
まるで、自分を捜しに来たかのような言葉。たったそれだけだというのに、胸の中があたたかくなる。
「……おかえりなさい。あおいさん」
「……! うんっ。ただいま。レンくん」
そして何より、この彼女の笑顔が見られるようになったこと。……心から、嬉しく思う。
(そして! 今のオレにとっては救世主!)
彼女は、わざわざ断りを入れてオレの隣に座った。
「お風呂入ってたの?」
「はい。オレンジ色を落としに」
「お。そっか。そういえばそうだったね」
すっかり落ちて綺麗さっぱりオレンジ色がなくなった銀色を、何故か彼女はまじまじと見つめてくる。こんなに、彼女の方から凝視されることなどなかったから、妙に緊張した。
「ど、どうしたんですか……?」
「……いや、まだちょっと濡れてるなと思って」
「え? そうですか? 結構拭いたんだけどな……」
この季節だ。普段はタオルドライで済ませば十分。それに今は、乾いていない髪よりも気になることがあるからそれどころではない。
そんなことを思っていて、オレが動かなかったからだろう。首からさっと、タオルを奪い取られた。
「えっ。あおいさん、いいですよ」
「だめだめ。ちゃんと拭いておかないと風邪引いちゃうでしょう? それともドライヤーで乾かして欲しい?」
「……はあ。タオルで十分です」
彼女が頑固なのはよーく知っている。だから潔く諦め、止めようとした腕を下ろし、彼女のされるがままに。