すべての花へそして君へ①

「ごめんねアイくん。さっきのも、アイくんなら受け止めると思ってたんだ」

「え……」

「そこで受け止めなかったら止めなかったで逆に謝るつもりだったけど。……強くなったんだね、あおいくん」

「……あおい。さん」


 強くなんてない。俺は弱い。弱いんだっ。だって……。


「みんながわたしのことをやさしいって言うけど、きっと、本当にやさしかったら今、ちゃんとあおいくんのことをぶっ飛ばしてたよ」


 彼女が。言葉を紡ぐ度に。どうしても涙が。止まらないんだっ。


「あの時も言ったよ? あおいくん。あおいくんが悪いことなんかひとつもない。ただ、わたしとお友達になりたかっただけだもん。気付いてあげられなくてごめんね。謝るのはわたしの方だ」


 泣くつもりなんてなかった。本当だ。答えなんかわかってたし。もう既に。一度振られてるし。
 それでもなんで。彼女の言葉は。やさしさは。


「……あおいさんは。っ。なにもわるくないっ!」

「……うん。そう言ってくれてありがとう。あおいくんもだよ? 何も悪くない。悪くなんてないよ?」

「……っ。ぅぅ」

「あらあら」


 どうしてこうも。俺の心に沁みてくるんだろう。


「ごめんなさい。ごめんなさいぃぃ」

「……悪くないっていうのに……」

「ごめ。ん。ごめんなさいっ! あおいさん!!」

「――! ……。いいえ? わたしのこと、助けてくれてありがとう」

「ううぅぅ~……」

「ありゃま」


 謝る勢いで彼女に抱きつく。彼女に縋りながら、滝のように涙を零した。


「すき。なんです。ずっとずっと。すきだったんです」

「あおいくん」


 それと一緒に溢れる愛。言うつもりなんてなかった愛。
 でも、それも一緒に、彼女は抱き留めてくれた。


「わたしも。強くてかっこよくて、かわいい照れ屋なあおいくんが、大好きだよ?」

「……。っ。あおいざ~んっ」

「ほいほい。泣きなさい泣きなさい。……あなたと家族だったこと。もっと早く知れればよかった。あなたと家族で……。本当によかったっ!」


 涙腺を崩壊させるには、十分すぎた。


「たくさんたくさん。ありがとう、あおいくん。本当に……。ありがとう」


 泣き止むまで彼女は、ずっとずっと、俺なんかにありがとうをたくさんくれた。


「あおい。さん」

「ん?」


 落ち着いた頃、そっと離れて見た彼女は、やっぱりやさしく笑っていた。


「俺は……。背負っていく。つもりだったんですけど」

「……」


 なんでかな。……なんで、だろう。


「……今。ちょっと軽いです。三振のおかげ。かな?」

「……そうだったら、わたしも嬉しいな」


 ……うんっ。やっぱりあおいさんは、誰よりもやさしい!


「でもっ! 俺は諦めませんからね! もう一回俺と結婚式を挙げましょう!」

「ははっ……。……わたしなんかを、好きになってくれて、ありがとね?」

「なんかじゃないですっ! ……。あおいさんで、よかったです」

「……そう言ってくれて、ありがと。あおいくんっ」


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