すべての花へそして君へ①
秘書と執事は全然別物だから
(なんで全然眠くないんだろ。ふっしぎ~)
きっと興奮状態なんだ。かわいいお友達を、助けてあげられたから。
(うむ。あたしが男の子だったら、絶対あおいちゃんはものにするわ。……いや、女でもいいか、この際)
そっちの気は全くないぞ! ハッキリ言っておくけど! いや、でもね~。かわいい子大好きなのさ、あたし。だって、かなくんだってかわいい分類に入れちゃってるもんねー。
未だ覚めぬ興奮を冷まそうと、少しお屋敷の中を散歩することにした。
(まさかお父が、こんなところで働いているとは……)
しかもお友達の執事なんて……――かっこいい!
あたしはお父さんもお母さんも大好き。特に二人が働いてる姿が好き。だから応援してるんだ。寂しくても、頑張ってくれてるのを応援してあげたくて。
(秘書も執事も似たようなものだしね~)
何はともあれ、バレたら恥ずかしいって言って何十年も内緒にしてた父にあっぱれだ! 一段落したら、【よく隠し通しましたで賞】をあげよう。
(あれ? あそこにいるのは……)
会場に入ってきた時は驚いた。本当に久し振りに、彼のあの髪色を見たもんだから。
(男の子も、恋したら変わるもんだよね)
相手によく見られたい。彼がそんな理由でしてはないとは思うけど、ハッキリ言って会場であおいちゃんにイチャつき過ぎだった。
いや、イチャついてるって言うよりは、微笑ましいというか羨ましいというか……二人とも、お互いが好きなんだなっていうのが見てるだけでわかっちゃうほどだ。
(だ、だから、あの空気をぶち壊した桐生先輩は恐ろしい……)
あんな、ラブラブしてたところに割り込んで? しかもひなくんに席を立たせるなんて……? ……怖い。想像しただけで彼のあおいちゃんへの愛が怖い。
それにしてもあおいちゃんは、いつひなくんのことが好きになってたんだろ?
(……あ。そうなったら、賭けはあたしの負けだ)
――どちらが先に恋に落ちるのか。
でもきっと、彼女の方が先だと思ってた。だから、デザートバイキングは最初から奢る気満々だっ! そんなの、ただまた会いたい口実なんだから。
(だってあたしは、変わらないってわかってたから……)
好き。ずっと好き。あなただけが、あたしは好きなんだ。