すべての花へそして君へ①

どんな検定も難なく現役合格


「わたしが、……そういうことに慣れてないからかも知れないんだけど」


 こうして手を繋ぐことももちろん、荷物を持ってもらったりだとか、庇ってもらったりだとか。もちろん今までなかったわけじゃないけど、でもその相手が好きな人なんだから、緊張しないわけがない。嬉しくないわけがない。


「いや、逆に慣れてたらそれはそれで嫌なんだけど」

「え? ……そうなの?」

「そりゃそうでしょ。慣れてないから……」

「……? 慣れてないから?」

「……、いいんじゃん」

「……そう?」

「もし慣れてたら、少なくともオレは慣らした奴の存在が、手を繋ぐ度にちらつくよ」

「え」

「オレはね。心狭いから」

「そっ、そんなことないよ!」

「誰でもなわけないでしょ。あんた限定」

「……!!!!」


 そ、それから……。ヒナタくんの前で、ちょっとしたへまをすることさえ怖くなってしまったんだと。ものすごく恥ずかしいんだと。


「……え。いつも変じゃん」


 そう言ったら、バッサリ。


「今までだって、結構へましてるじゃん」


 例えば、毛糸のパンツ見られたり。体育祭、一人で行動すんなっつってんのにしたり。文化祭も同上。


「……ハイ。仰る通りで」


 なんか、今までの失敗を指摘されて、尚且つ叱られているような気分になった。しかも正論のため反撃できず。


「それから?」

「え?」

「終わり? 他にはないの?」


 上から降ってくる声は、体から直に伝わってくる振動は、なんだか楽し……いや。嬉しそうだった。


< 29 / 422 >

この作品をシェア

pagetop