すべての花へそして君へ①
猫とタンスと叶わぬ『誓い』
多分オレは追わないだろうなと思った。だからオウリに、分かれることを提案したんだ。すぐに頷いてきた辺り、それは向こうもだったみたいだけど……。
「あー。だよなー……」
まあ、あいつが追いかけるならオウリだろ。
「……はっ。なに、逃げてんだよ」
だから分かれた。あいつと、二人っきりになりたくなかったから。確かに、マジで食われるかも知れねえって、ちらっと思ったけど。……それだけじゃ、ないよな。
「はあ。……ばーか。なに、やってんだよ」
トンと壁にもたれる。疲れてるわけじゃない。だって、分かれてからは隠れてるだけなんだから。
「なに、ビビってんだよ……」
指先が小さく震えていた。あいつに食われそうで怖かったとか。そんなんじゃないことはもちろんわかる。……わかってるんだ。
「……怖え」
ほんとのことを言うと、オレが気持ちを伝えられたのは、あいつが誰も選ばないことを知っていたからだ。
だから、怖くなんてなかった。だって、答えはみんな同じだったから。……だから、怖くなった。もうあいつが……選んだから。
(……感謝してるんだ。なにもかも)
キサ。キク。トーマ。幼馴染みのあいつらを、救ってくれたこと。……オレのことも。救ってくれたこと。
(……ちゃんと、オレの想いはあいつに届いたんかな)
誓ったんだ。オレは、届くまで諦めないって。
「……どうすんだよ。オレが、路頭に迷ったら」
届いたとしても、……諦めらんねえよ。
「言ったでしょう? わたしは、ちゃんと見てるよって」
「――……!!」