すべての花へそして君へ①
4-16



 初めて出会った時、彼女は真っ白なベッドの上にいた。


 透き通るような肌に、ほんのり紅の差す頬。

 入院しているにもかかわらず、その髪には艶があり。

 一度だけ梳かせてもらったそれは引っ掛かることなく。

 鼻腔に届いた、彼女の甘い香り。


 表舞台へ一度も姿を現さなかった彼女の功績は、簡単に言葉にはできなかった。



 出会いは突然。

 そして、別れもまた然り。


 初めから実ることのない、淡い恋心。

 彼女がいなくなってからも、その思いは潰えることなく。


 今もまだ、心の中で燻っている。





 長い長い片想い。

 長い長い実らぬ恋。

 とても苦い初恋だったけれど、たくさんの出会いがあった。



 ぼくのまわりに咲いた、たくさんの花たちを。

 ……彼女はどこかで、見てくれているだろうか。




< 334 / 422 >

この作品をシェア

pagetop