すべての花へそして君へ①
「あ。ドMの変態がこんなところで頭を垂れている。よく『絶望した』的な感じで使われる文字にそっくりだ」
「ううぅぅ……」
「おー。どうやら泣いているようだ」
「だああー……」
「傷付いた? それは一番したくなかったんだけどなー」
「傷付いてないもん。だって全部本当のことだもん」
「流石に一個くらいは否定しなよ」
「だって。ほんとうだもんっ」
「まあね。そうだけど」
ううぅ……。確かに、実力的な面で言ったら敵無しとほぼ言ってもいいかもしれませんが。わたしの唯一の弱点であり、勝負したら絶対に勝てないのが彼なんですよね。
強さじゃないんだー……。立場の問題なんだー……。主人には逆らえないんだー……。
(でも。まさかこんなことが考え事なんて……)
物申す……まではいかなくても、流石にここまで言われたんだから、ちょっと……な、何かは言っていいと思うっ!
「だ……っ、第一ヒナタくんが――、……!」
意を決して、やっぱり文句の一つや二つ……お礼の三つや四つは言ってやろうと思って、垂らしていた頭をグイッて上げたら。
「オレが。……なに?」
彼は、目と鼻の先でニコッとかわいく小首を傾げながらしゃがみ込んでいた。てっきり立っていると思ったわたしは、そんな至近距離に驚くあまり、出かけていた言葉が喉元に返ってきて思わず噎せる。
「ごほっ。ゴホッ、こほっ」
「え。だ、大丈夫?」
「ごほっ。だ、大丈夫。別に美少年アレルギーってわけじゃないので」
「突っ込みづらい」
「すんません」
地面についてた手の平も膝もそろそろ痛かったから、しゃがみ込むのを理由に、彼から少し距離を取った。
(めっ、目の前にヒナタくんのドアップとか、ほんと心臓に悪いから……っ)
もちろん、本当の理由はこっちだ。まあ、少しと言っても手の届く範囲だけど。だから、小石が付いたわたしの手を、彼が取れるのも当然。
「いちいち動きが激しいんだって」
「……へっ、へいっ」
文句を言いながら、手の平をやさしく撫でられる。
……正直、どっちもどっちだった。どっちも心臓には悪いわ。