すべての花へそして君へ①

「思い出したかね、あおいさんや」

「ぶぶぶぶぶ」

「え? なに?」

「ぶーぶぶぶー!」

「そう。覚えてるんならいいんです」


 すごいヒナタくん。あおい語(タコさんver.)を習得されておる。


(い、いや。それに感心せんこともないけど)


 あ、あの時は……その。無我夢中というか。好きが、溢れちゃったというか。……が、我慢できなかった。とか。


「あぁあああ」

「え。あおい?」

「ご、ごめんなさいひなたくん。わ、わたし欲求不満だったみたいで」

「え」

「も。もう待てなかったんだ。ひ、ひなたくんがすきで……」

「……」

「が。我慢できなくて……。うわっ。ご、ごめんなさい……」


 今ばっかりは見て欲しくなくて、顔を両手で覆いながらヒナタくんの体にピッタリくっついた。そんな恥ずかしさMAXのわたしを、ヒナタくんはこれでもかと言うほど力を入れて抱き締めてきた。


「っ。ひ。ひな」


 言いかけたわたしの耳に届く、ドクドクと速く脈打つ鼓動。それの影響なのか。彼の鼓動よりも速く、わたしの心臓も早鐘を打ち出した。全身が……熱い。


「……オレも、一緒」

「ふぇ?」

「オレも、欲求不満」

「ぅえっ!?」

「それでさっき、アカネに顔面パンチ食らった」

「ええっ!? な、なしてまたそのような。ていうか……。その。顔は大丈夫?」

「大丈夫じゃなかったら会った瞬間わかるでしょ?」

「そ、それもそっか」


 腕の力が緩まることはなかった。その力強さが……余計、心臓を速く動かした。


「……バッターの選出。したでしょ?」

「え? んと、トーマさんとアキラくん。レンくん?」

「……」

「……え? ツバサくんも?」

「ううん。ツバサじゃないよ」

「……あ。アカネくん。パンチされたって言ってた」

「うん」

「……? ……え。もしかしてアイくんも?」

「あれ。気付いてるんじゃないの?」

「え? な、何故そんな風に思ったの? 流石にわかんな……あ」


 そういえばアイくん、バッターに関して何も聞いてこなかったっけ。あれは上手く誤魔化したってところか。なんか変だなとは思ってたけど。


「カオルが、あんたが五番バッターを探しに行ったって教えてくれたからさ……」


「てっきり、バレてるんだとばっかり思ってた」と。そう言う彼に「ただバッターの数を数えてただけだよ?」と教えてあげると、腕の力は緩まなかったけど、安堵のようなため息のような息を、大きく吐いていた。


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