すべての花へそして君へ①

「……でも、なんでそれが欲求不満?」


 わたしのためを思って、そんなことをしてくれていたのに。それなのにヒナタくんをパンチしちゃうなんて。……アカネくんが、手を出すとか珍しい。


「オレが、待てなかったから」

「……え」

「早く自分のものにしたかったから」

「え」

「はじめは、……あおいが少しでも言い易いようにって思って、みんなにとっては最低だったけど、それでも頼んだんだ」

「……ひなたくん」


 ……けど。自分でも気が付かなかったんだと。結局は……そういうことだろうと。


「無意識って怖いね。全然そんなこと思ってなかったのに、そう言われてめっちゃ体熱くなったもん。ちょー恥ずかしかったし」


 支えたかったのも本当だった。でも、彼にそう指摘されて、気付いたんだと。


「……もうさ。我慢できなかったんだよ」


 ふっと緩んだ腕の力。顔を上げるタイミングだと、そう思ったけれど。まだ真っ赤で。恥ずかしすぎて、顔が上げられないと。流石に今は見られたくないと。……そう。思ったけれど。


「……。あおい」


 でも……。上げて、って。……言うもんだから。ほとんど甘い吐息の声で。……名前。呼ぶもんだから。


「……アイの前で、そんな顔してたの?」


 見上げた先。そこには、わたしと同じように顔を赤くしたヒナタくんがいて。その瞳は、どこか余裕のない光を灯していて。
 もう。恥ずかしすぎて声が出せなかった。限界を超えると、できるものもできなくなってしまうみたい。ただ、必死に首を横に振った。


「……じゃあ。もっと赤くなってたの?」


 わかってるくせにっ。それにも。ただただ首を何度も振った。


「……そんなに必死にならなくてもわかってるよ」


 だったら……。わざわざ聞かないでよ。そう思ったけど。……もう。なんかいろいろいっぱいいっぱいだった。


「……あおい。オレもう我慢の限界」


 グイッと勢いよく引き寄せられて、無理矢理膝立ちをさせられる。
 ヒナタくんの肩に手を置くけれど……顔が近いっ。


「真っ赤だ。……あおい。かわいい」


 た、しかに……。言って欲しいって。言ったけど。


「……好き」


 い、言ったけど……っ。


「好きだよ。あおい。誰よりも。何よりも。ずっと。……ずっと」

「……、なたく」


 それはもう、わたしにちゅーされる前提で言ってるんですよね?! ま。前払いとは卑怯な……。
 すっと。熱い手が頬を撫でる。髪を、耳に掛ける。首に、肩に、腕に触れて、腰に帰る。


「そうやって焦らすんだね。オレのこと」


 じ。焦らすとかそんな高度な技使えないし。


「……ねえ。あおい」


 甘い声で。呼ばないで。


「……愛してる」


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