すべての花へそして君へ①

これはお使いとは言いません

🏵

「おい。ちょっと待て待て」


 取り敢えず止める。取り敢えず止めた。取り敢えず止めておかないと……。


「……なんですか」

「おい。お前、『止めんじゃねえよ』ってダダ漏れだぞ。そんな睨むな」


 先程の違和感。彼女の笑顔は、いつもと少し違うようで……そして、俺に何かを言いたげなようだった。


(男同士、か)


 もしかしたらアオイちゃんは、それに引っ掛かっていたのかも知れない。いや、引っ掛かっていたというよりは、それこそを大切にしたかったのかも。だからきっと、女である自分ではなく俺に、このバカを頼んだんだ。


(……できた女だな)


 このバカは、普段は大人びてるってのにまだまだお子様みたいだけどな。アオイちゃんに限ってはの話。


「だって。……っ、わかってくださいよ、カエデさん」

「わかってるから止めたんだっつの」


 お前今、何しようと思ったんだ、何を。今にもアオイちゃんに飛びかかっていきそうな顔しやがって。


「気持ちはわかる」


 あんなにかわいくていい子で、そして何よりそっと男のプライドさえも支えちまうような。そんな女の子、探して早々見つかるもんじゃない。


「だから、そうイライラすんな。貧乏揺すりが怖えよ」


 わかってんなら止めんじゃねえって顔すげーな……。


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