サヨナラじゃない
「え…っと、雨坂ちゃん、だよね…?」
うつ伏せ気味な顔をゆっくりと持ち上げてこちらをみる男の子。
「そうだよ、ちーちゃん」
昨日の優しくて明るい声じゃなくて、暗くて覇気がない。なんか、周りと馴染むのを怖がっている。
……昔の私みたい。
「ちっ、」
思わず舌打ちがでた。
「ちーちゃん…?」
ヤバい、抑えれそうにない。
「ここが嫌いなのか?」
「き、キライなんて。滅相もないっ…!」
だったら、
「だったら、1人でウジウジすんなっ!中学2年生なんて、1度しかねぇんだぞ?もっと楽しめ、胸を張れ!」
…怒ってしまった。
しょぼくれながら雨坂ちゃんをみる。
その顔は。
ー雨坂ちゃんの顔は、顔を覆っていた雲が、どんどん消えていく。そして、光りが差していく。
「だ、だよね。雨坂小桜ならやれる。うん、やれる。」
ボソボソと呟く雨坂ちゃんを不思議な顔で私はみた。
「ありがとう…!ちーちゃん!!」
彼女は多分、強いんだ。
…私とは比べ物にならないくらい、強いんだ。
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