サヨナラじゃない

〚楽しいをくれたのは〛

「と、言うわけです…」
言ってしまった…。
「千影、」
アラレは唖然とした様子。
何故か、どんどん顔が青白くなっていくアラレ。
「そ、そんなことが…」
雨坂ちゃんは戸惑いを隠せていない。
石川は……。
はぁ、これ以上人の様子を確認するのが嫌になってくる。
「…なぁ、千影ちゃん」
行き成り石川が口を開いた。
「な、何…?」
「ここは、楽しいか?」
え、
まさかの質問だった。
楽しいって、そりゃ、
「楽しいに、決まってる、」
「なるほど、」と石川は言った。
何がなるほどだよ。
「じゃあ、なんで楽しいの?」
また、質問だ。
楽しい、理由。
友達ができた。雨坂ちゃんという親友ができた。
石川は……会ったばかりだから思い出ないなぁ。
でも多分、一番楽しいをくれたのはーー
アラレだ。
私に初めて明るい感情を宿らせてくれた不器用な完璧人間。
私は、ポロッと涙を零した。
雨坂ちゃんは「ち、ちーちゃん…!?」っと少し焦ったが、石川がそれを制した。
「最後の質問。一番楽しいをくれた相手を、千影ちゃんはどう思う?」
考えたこともなかった。
「……好き、かな?」
顔が熱い。
なんで正直に言ってしまったんだろう。
恥ずかし過ぎて死にそうだ。
「おぉ、!!」
「…ふぁい!?」
石川と雨坂ちゃんは盛り上がってる。
アラレは……
「アラレ…?」
呪文のようにある言葉を復唱していた。
「まだ、死にたくない」と。
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