Correct! 【アルトレコード】
 こういうとき、追加や修正を行ったあとのインデント——行頭に空白を入れて字下げを行うこと――をして綺麗に直したときにバグが出るのが怖くて直せない。
 ここに来てからはアルトへ渡す教材をデータ化したり、彼に関することがほとんどだ。時間に余裕があるし、わからないことは北斗さんが丁寧に教えてくれる。

 ときおり、ほかの部署の手伝いをすることもある。遊撃隊みたいに頼りにされる北斗さんはすごい。そして、私は微力ながらそのお手伝いをするから、それもまた勉強になる。むしろ私の勉強になるからって北斗さんが他部署から仕事をもってくるときもある。でも、アルトの教育もあるから、必ず無理のないスケジュールにしてくれている。そうしてゆったりと育てて貰えてありがたい。

 なんといっても、北斗さんに「わからないことがあればすぐに聞いてね」と言ってもらえるのが一番ありがたい。そんなことを言ってくれる人、前の職場ではいなかった。みんな余裕がなかったから。
「仕事量、多くない?」と聞いてくれるなんてまるで神だ。「大丈夫です!」って答えると、北斗さんは少し複雑そうな顔をするのが気になるけれど。

 北斗さんのプログラムはいつも美しくて見惚れてしまう。無駄がなく、かといって無骨ではなく流麗。芸術品の域に達していると言っていい。
 この研究室でプログラムを組んでる姿を見たこともあるけど、手が早いし正確で、作っている姿そのものが芸術品だ。
 見ているだけで勉強になる……と言いたいところだけど、すごすぎて勉強にならない。

 私がプログラミングを頼まれたら、まずネットで検索して調べるところから始めることになる。
 どんどん新しいことが出て来るからずっと勉強が続く。

 それでも、今はいい。前は勉強する暇もなかった。
 転職前はスピード重視で雑なプログラムを組むはめになることが多かった。疲れによるミスもあるし、その分、リライトの指示が多くて、かえって仕事が増えてた気がする。

 古いAIの補正プログラムってどんどん付け足しが増えて複雑化していく一方で、大変だった。バベルの塔みたいにいつか崩壊するんじゃないかってびくびくしていた。
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