すべての花へそして君へ②

 オォ゛オオエエ゛ェエーッ。


 ――――――…………
 ――――……


「あたし、堂々とゲロ吐くヒロイン、ジャ〇プでしか見たことなかったわ」

「キサちゃあーん! だってえだってえ! 美味しいからついつい食べ過ぎちゃったアルよー!」

「真似て言っても、あっちゃんが吐いた事実は変わらないよ」

「あおいちゃんって、やっぱり宇宙人だったんだね!」

「ユズちゃん? “やっぱり”ってどういうことかな……?」


 無事(?)に体育祭が終わり、わたしたちは只今、女子会中です。というのも、いつの日か約束したユズちゃんとのデザートバイキングへ、足を運んでおりました。
 いつかいつかはやると思っていたけれど、まさか鼻血じゃなくてこっちが出てくるとは。絵面的にはこっちの方がアウトなのに。でも、今はそんなこと言っていられないのだー!


「キサちゃんあと何分!?」

「あと10分。ついでに言うけど、あっちゃんトイレ1分で帰ってきたから、そんなに時間は潰れてない」

「60分の貴重な1分だよ!? 元取らないと……! あむはむ!」

「あたしもあおいちゃんには負けないんだからー! もぐもぐ!」


 大行列の人気店ということもあり、制限時間はまさかの60分! 最初に焦って詰めすぎたせいであんなことになってしまったけれど、焦らず騒がず! 今度は美味しさを噛み締めつつ時間いっぱいデザートを食べまくることに。


「あんたら見てるだけで胃もたれするわ……」


 ユズちゃんと一緒に、キサちゃんの分まで食べまくりました。そして、彼女の胃袋はまるで宇宙のよう。


「あおいちゃん、デザートは別腹なんだよ~」


 わたしが見ていた限り、別腹の次元じゃなかったよ。確実に。
 それからデザートバイキングを終えた女子会は、優雅なクラシックが流れる、レトロ調の落ち着いた喫茶店へ場所を移した。


「それで、旅行はどうだったの?」

「んんっ!?」


 甘ったるい胃の中へ、それぞれ頼んだ飲み物を落として一息つこうとした瞬間爆弾投下。危うくグレープフルーツジュースを噴き出しそうに。もう、いきなり言うんだもんなあ。


「た……楽しかった、です」

「その“楽しかった”を詳しく」


 容赦ねえな、女王様。


「……あ。すみませーん! クレームブリュレ一つ下さーい!」


 ユズちゃん、まだ食べるんだね。賭けには勝ったけど大食いには完敗だぜい。


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