すべての花へそして君へ②
「こちらでお待ちください」
そしてしばらく校内を歩いたわたしたちは、大きな扉の前まで案内された。
既視感を覚えるほどの大きな扉に、思わず苦笑い。どこもかしこも、お金持ちというのは金ぴかなものが好きらしい。
「二人をよく知っているだけあって、なんだかすごく似付かわしくない気がするのは、きっとわたしだけじゃないはず」
「だねー。おれもそう思う」
「右に同じ」
オウリくんとアキラくんに賛同をいただけたところで、目の前の扉が内側からバンッ! と勢いよく、そしてタイミングよく開かれた。
「あおいさん助けてえ!」
と思ったら、同時にご指名いただきました。
どうも、桜ヶ丘生徒会のナンバーワン庶務“AOI”です(キラリン)
「今日の17時までに申請あげないといけない書類が束のようにあって……ぐすん」
スルースキルを発動して、完全にわたしの決めポーズなんか見向きもしてくれないアイくんは、うるうると瞳を潤ませながら仔犬のような目でわたしを見つめてくる。
……ふむ。どうやらお困りのようだ。これが終わらないと、親睦会もできずじまいかな。
「んじゃ、ここはひとつ。極秘でお手伝いといきますかー!」
「あっくん。あーちゃんの可愛いもの好きも困ったものだよね」
「そだねー」
――――――…………
――――……
17時まで残り5分というところで申請書類は無事完成。アイくんはというと、涙ぐみながら猛ダッシュで「この恩は俺の一生を君に添い遂げることで返していくね……!」と、書類提出という名の言い逃げを繰り出していった。
「お気持ちだけいただいておきましょうかね」
「それでいいと思いますうー」
結局のところ全員で取りかかり、ものの数十分で終わらせるという快挙を成し遂げたわたしたちは、一息つきましょうとお言葉に甘えお茶をいただいていた。
「いやあ、仕事終わりの一杯は美味しいね! ジョッキで出してくるのがまたイカしてるねカオルくん!」
「お褒めにあずかり光栄ですう」
カオルくんの話によると、提出ギリギリになったのはアイくんの自業自得とのこと。私情にかまけて生徒会の仕事をサボっていたらしい。
「まあ原因はあなたにもあるようなので、来られたときに手伝ってもらえばどうですか? と提案はしましたけどお」
そういえば最近、学校がある日はいつもアイくんと帰ってたっけ。確かに次は文化祭の準備で忙しくもあるけど、やっぱり人数が多い分仕事を割り振れるから、わりと下校時間は早かったかも。
恨めしそうに見てくるカオルくんに、その節はどうもご迷惑を……と、取り敢えず謝っておく。