すべての花へそして君へ②
「にしても、今日はお二人ご欠席なんですね」
「え?」
そんなはずは――そう思って振り返ると、確かに二人、いなくなっていた。
いや、でもさっきまでそこに……話してたのに。アキラくんとオウリくんは、一体どこに?
「……ああ、いらっしゃることはいらっしゃるんですねえ」
「そうですかそうですか。それはまあおかわいそうに……」と、なにやら意味深な言葉を呟いているカオルくんだったけれど、どうやら当てがあるらしい。
「すぐ戻ってこられると思いますう。なのでよければ親睦会の準備をしながら待ちましょう」
珍しくニコニコと、無邪気に笑っているカオルくんに目を瞠りつつ、不思議に思いながらもひとまずはその提案に乗っかっておくことにした。
けれど、そのあとすぐアイくんは帰ってきたけれど、うちの二人は一向に帰ってくる気配がなかった。
「……鷹人、お前何か知ってるんじゃ」
「そーやってすぐ藍は人のせいにするー」
「今までこういうことがあったときは大抵お前のせいだったじゃん!」
「それは虐めがいがあるから悪いんだよ。ねー薫」
「そうですよお。アイさんが全部悪いんですうー」
その代わりと言ってはなんだけど、今現在アイくんたちと楽しそうにお話ししているのは、例の……あの人だ。
『あの一件のせいでアイとカオルが生徒会不在になって、一人で仕事を引き受けた奴がいるらしい』
成績よし、要領よし、頭も切れる、とってもいい性格の持ち主と噂の……そう、癖がありそうなあの人。
「でも、僕ほんとに何も知らないよ? 今回は薫なんじゃないの?」
「いえいえ。ぼくはアイさんを虐めるので忙しかったですからあ」
「お、いいねー。今日は何して虐めてたの?」
「しれっとぼく担当の書類も混ぜておきましたあ」
「えっ!? そんなことしてたの!?」
「今のところ成功率は100%ですぅー」
「注意力散漫だねー。藍もまだまだだ」
タカトさん……と言うらしいけれど、カオルくんとは息ぴったりだ。ある意味。
「ね? 君もそう思うよね?」
「え? えーっと。それは無しにしても、仕事は疎かにしちゃいけないかと……」
「だってー藍」
「だってあおいさんと帰りたかったんだもんっ!!」
「仕事に私情を挟むのはよくないですう」
その後も、振られた話題に愛想よく返事をしてみたけれど、わたしの頭の中ではある場面が何度も再生されていた。
そう。今現在もアイくんたちと楽しそうに話している、彼の登場シーンである。