すべての花へそして君へ②
 ✿


 一方その頃。みんなが探してくれているとは露知らず、一室に閉じこもっている二人はというと……。


「ていうか、ここだけの話あーちゃんに構って欲しいからまだ甘いもの好きアピールしてるんでしょ」

「んんん(じゅぽっ!)……そんなことはない」

「ていうか、ここだけの話あっくんの無感情みたいな顔、おれは昔っからわかってたよ」

「……そうなのか?」

「ここだけの話、だからあっくんのことチクったのおれなんだよねー」

「……そうなのか」

「だから、ここだけの話あっくんの無表情っておれには効かないんだよ」

「……そうか」


 ひょいっ、と手持ちから取られたカードに、「あぁああ」と悲痛な叫びが漏れた。


「あっくん、人に嘘つけないタイプだもんね。将来商談とか大丈夫?」

「大抵の人はわからないから平気だもんっ」

「……まだババ抜きするの?」

「勝つまでやるもんっ」


 意地を張っているアキラに、オウリは再び賭けられたお菓子を自分の陣地へと引き寄せながら、小さくため息をついた。


(こいつら暢気に……)


 とっても楽しそうな部屋の雰囲気に、ちょうどそのシーンを目撃した誰かも、大きなため息をついていたとさ。


 ✾


 さすがに5分だけでは、工場内半分も回りきることはできず。約束通り、定時報告として彼女に電話をかけた。


「もしもし葵さん? 何か変わったことはありました?」


 ――けれど、返ってきた言葉に、僕は慌てて踵を返した。


『特にないよー。ただ、スーツ軍団と戦闘してるくらいー』


 ――それのどこが、特にない、だ!


 ――――――…………
 ――――……


 戻った工場入り口には、惨劇の爪痕が少し残っていた。


「……あ、タカト。おかえりー!」


 出迎えてくれた彼女は、爽やかな笑顔を浮かべながら最後の一人を縄で縛っている。何となくは想像がつくけれど、どこから持ってきたんだろ縄。


「あのね、葵さん……」


 こういう状況は、普通の場合『変わったこと』と言うんですよ。
 にしても……。にー、しー、ろー、はー。……大の大人十人一人でやっつけちゃったよこの人。


「ゲームには関係ないことだったからさ」


「私情を挟んでごめんね」と、彼女はパンパンッと手を叩きゆっくりと立ち上がる。……私情を挟まれたのは、君の方だろうに。


「……一応聞いとくけど、怪我は?」

「ふふ、ないよ」


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