すべての花へそして君へ②
そこまで言って彼女は、握った手に力を入れてから、そっと離した。
「…………」
「お二人からは、ちゃんと誠意が伝わってたよ?」
だから責めてやるなと、彼女はそう言っているのだろうか。彼女に言われたなら、僕に責める資格はない。
「……すみません。決して、仕事の邪魔をしたかったとか、そういうんじゃないんです」
「うん。だから今も、お二人はわたしに何もお話しにならないんだと思うよ」
「……え?」
僕と同じように、驚いた空気が両側から伝わってくる。一体、彼女はどこからどこまで気がついているんだか。
「だったら、どうして僕がこのゲームに“乗った”のか。君はもうわかってるのかな」
「……きっとね? わたしたちに届いていたヒントは、二人の居場所とは全然関係なかったんじゃないかと思うの」
「だろうね」
「だからね? 一生懸命二人を捜そうとしてくれたあなたを見て、誰も自ら望んでゲームに参加したとは思わないよ」
そう言って彼女は、また嬉しそうに頬を緩めた。
「何か、わたしだけに話したいことがあるのかなって。何を話してくれるのかなって。必殺技出しながら楽しみに待ってたよ」
「はは。……そっか」
彼女にはもう、隠してはおけないのか。本当は、彼女の耳にすら入れたくはなかったのに。
けれど、そう思う中で、自分の中で彼女に話したいという気持ちがなかったわけではなかった。だから僕は、何も疑わず、簡単に自分の名前なんか入力してしまったんだ。
――だったらもう、話してしまおうか。
きっと彼女なら、こんな話も笑って聞いてくれる。きっと笑顔で、何か素敵なことを言ってくれる。きっと……大丈夫だ。
「……うん、そう。僕は君に、言ってなかったことがあるんだ」
もしかしたら【これ】にも、気付いていたのかもしれないな。
そんなことを思いながら、画面に出ている文字が見えるように持ち替えて、僕は真っ直ぐに見上げてくれる彼女を見据えた。
「僕は、君の【予備の候補者】だったんだ」