すべての花へそして君へ②
彼女、それからスーツの男たちを交互に見ると、三人とも同じようにウンウンと頷いていた。いや、でもそれとこれとは関係ない。
「……何の用かは知りませんが、生憎僕たちには時間が無いのでお引き取り願えませんか」
訴えかけるように見つめてみるけれど、彼らは一瞬目配せをしただけで首を横にしか振らなかった。
それに内心舌打ちをしつつ、今一度説得を試みようとしたところでまた、背中の人に邪魔をされる。
「タカト」
「……なんですか」
君のためにやってることなのに……と、大きなため息を落としながら振り返ったそこには【GAME OVER】の文字が。
視界には、この季節特有の濃霧。時刻は19時を回り、あたりはもう真っ暗だった。
「【あなたの名前を入力してください】って書いてあるんだけど、わたしのじゃなかったんだ」
そしてその下には、パスワードを入力するように指示が出ている。
「……貸してください」
ため息一つ落とし、半ば奪うように借りたタブレットへ、パパパと片手で入力。すでにゲームオーバーになった僕たちにとって、この作業に何の意味も持たないことを疑わず。ただ僕は、彼女に言われるまま、ロックを解除した。
……だから、油断していた僕は、そこへ新たに出てきた【ヒント】に、動揺を隠しきることはできなかった。
「まず気になったのは、はじめのペア決めの時」
そして彼女は、そんな僕の手をそっと取り、諭すような口振りでゆっくりと話していった。
「ついつい出っ張っているものを引っ張ってみたくなるのが人の心理だよね。あなたはそれを利用してペアの組を決めた」
「まあ100%成功するとは限らないけれど、うちの生徒会メンバーみんな素直だから……あ。一人例外もいたけど」と、くすくす楽しそうに笑っている彼女は、みんなが缶に気をとられている中、ほんの一瞬だけ細工した割り箸の仕掛けさえ見抜いていたらしい。
「次におかしいなと思ったのは、あなたが二人の場所を知らなかったこと。それまではてっきり、タカトがこのゲームを考えたんだとばかり思ってたけど」
――あなたは、少しだけ教えられただけで、わたしたちと同じくゲームに巻き込まれた。
「恐らく、二人を連れて行ってしまった人に」
そこまで言って彼女は、僕の両側にいる彼らへ優しい視線を送る。
「極めつけは、あなたがずっと気にしていたこちらのお二方。さっきの愚か者軍団は誤算だっただろうけど、あなたは彼らとわたしの接触を阻止しようとしていた。それも、もちろんあなたの意思じゃない。二人を連れて行った人が、彼らにそう指示したから」
脱力した僕を下から見上げてくる彼女は、「なんだかこういうの久し振りっ」と、一人嬉々としているように見える。
「そして、あなたも【百合ヶ丘】の生徒だ」