すべての花へそして君へ②
あれから道明寺の事件が終決、もちろん今まで行方不明だった俺自身も大々的にニュース取り上げられる……はずだった。
しかし事件解決同時期に発表となると、俺が何かしらあの事件と関わっているんじゃないかという噂が立つのが目に見えている。それを危惧し、今現在俺の存在はまだ、皇の力で抑え付けられていた。
(実際問題、葵や紅葉さんが上手い具合に事件に荷担している証拠を残さずに動いてくれたから、今こうして平穏に暮らせてるんだけど……)
ふと視界に映る書類の山、山、山を見て、「これって平穏か?」と疑問に思ったことへは取り敢えず無視を決め込んで。
……きっと俺はどこかで、大丈夫だと確信していたのだろう。だから本当に、無罪を言い渡されたときは、全く驚くことはなかった。
『おーい。……シント?』
「……まだちょっと判断が難しいかも。行けそうだったらまた連絡させてもらう」
『うん! わかった! 連絡待ってるね』
行くとすれば、まだ身元を隠す必要があるか。まだ夏だ。
まあ、そんな野暮なことをする輩は、この皇信人が痛い目見せてやるけど。
『頑張ろうねお互い。何かあったら、またこうやって話そ? 息が詰まっちゃう前に電話してね。できない時もすぐ折り返すから』
「じゃあ、葵にとっておき。俺が一発で元気になれる方法教えておいてあげ」
『デートはしない』
「………………ぐすん」
その後、昔の解雇する・しないのような、くだらない話をして……。
「まあ冗談はさておいてだよ。葵はこれからどうするの? 今は花咲にいるんだよね」
『うん。そうだよ。……そう、なんだけど……』
ほんの少し。ほんの軽い気持ちで、彼女のこの先へ、探りを入れてみることにしたのだけれど……。
「……悩んでるね」
『そう……だね』
「じゃあさ、したいことは? 葵がしたいことすれば」
『それがよくわかんないの』
「細かくなくていいんだって。真面目すぎ。大雑把でいいんだよ。そっから絞ればいいんだから」
『……とはおっしゃいますけど、真っ白だとそれすらもままならないんですってば』
真っ白、だって? 一体、何をして……。
「……まあ気負いしないで。葵のまわりにはもうたくさん相談できる人たちがいるでしょ?」
『うん。いろんな人から話聞いてみるよ! ……ありがと。シント』
それからまた、くだらない話をしてもう一度『寝言は寝て言え』と言ってから、彼女は電話を切った。
俺はしばらくの間、通話終了の画面に視線を落としながら、深く息を吐いた。
「終わったか」
「楓。……うん、ごめん」
「いいって。お前根詰めすぎだ。ぶっ倒れるぞ」
「これくらいへーき。葵がいれば俺は元気百倍」
「そう言っていられるうちは大丈夫だって思うことにする」
「……うん」