すべての花へそして君へ②

「酔ったミズカさんから逃げるのに苦労するくらいなら、俺には一生勝てないね」

「はあ? アイだって絡まれてたじゃん」

「あれはお酌をしてたんだよ。『娘さんを俺に下さい』って。ちなみに了承は得た」

「はあ!? そんなのミズカさん酔ってたんだから無効に決まってるでしょ!」

「わたしの了承を得てないんだから無効に決まってるでしょ」

「「そ、そうですね……」」


 そんなこんなで、昨日はたまたま金曜日。大抵金曜日の夜はお誘いを掛けているので、大きな荷物を持って彼はお泊まりに来たというわけだ。

 それから最後に。
 全ての事が一段落して。父カナタは、母クルミとの交際を、実の父親――つまりわたしの祖父に頼み込んだらしい。母情報によると、以前ヒナタくんに言われた通り、父は母が如何に優秀な人材なのかを力説。たくさん語っていたらなんと。


『お前は、好いた女性を道具としか見ないのか』


 ――と、一発。拳骨を食らったらしい。
 けれど、その一言で十分だった。祖父もいろいろ考えたらしく、父の気持ちをもっと考えるべきだったと猛省したらしい。
 そして無事に。ついに。やっと。ようやく。……二人は籍を入れることができた。彼らの嬉しそうな顔は、今でも。これからも決して、忘れることはないだろう。


「着いたよ」

「お! もう? 思ったより早かったね~」

「だね。俺、こういうのって初めてだから、すごく楽しみだよ!」

「うんっ。きっと楽しくなるよ!」


< 9 / 519 >

この作品をシェア

pagetop