誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
ビルの灯りが川口さんの頬の涙を照らしていた。

私は思わず口元を押さえる。

彼女の想いの強さが、まっすぐに伝わってきたから。

「……ありがとう。」

隼人さんの声は、低く、そして誠実だった。

彼女の想いを否定せず、けれど応えることなく、丁寧にその場を締めくくる。

川口さんはそっと頭を下げ、涙を拭きながら、その場を去っていった。

そして、隼人さんは――まっすぐに、私のいる場所へと向かってきた。

「これでいいか。」

隼人さんの問いかけに、私は小さく頷いた。

「はい。」

やっと、ひとつの想いに決着がついた気がした。

私たちは静かに歩き出した――その時だった。

「えっ?」

突然、背中をトン、と軽く叩かれた。

驚いて振り返ると、そこには――川口さんが立っていた。

「川口さん……」
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