誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
桐生部長が、ゆっくり私の方を見る。

「だから今日、篠原さんを連れてきたのよ。」

「それは嬉しいな。」

その笑顔は穏やかで、だけどどこか余裕たっぷりで。

まるで、何も知らないふりが板についているみたいだった。

「実はね、篠原さんとはゆっくり飲みたいなぁって、ずっと思ってたから。」

「やっぱり!」

隣で上林さんがニンマリと笑って、ビールを一口。

「ほら、篠原さん。せっかくの機会なんだから、あのこと聞きなさいよ。」

「えっ、あのことって……?」

「決まってるじゃない。結婚のことよ。」

「ぶっ!」

私は危うく飲みかけのハイボールを吹き出しそうになった。

「ちょっ、上林さん!」

「ほらほら、聞かないと進まないわよ。ね、部長?」

冗談とも本気ともつかない雰囲気の中で、上林さんは桐生部長の背中をぺしんと叩く。
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