誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
上林さんはいたずらっぽく聞く。

「……さあ、どうだろう?」

部長は私の方をチラリと見て、ニヤリと笑った。

「ねえ篠原さん、部長の本命って誰だと思う?」

急に話を振られ、私は一瞬言葉に詰まる。

「え……それは……」

私は、やけくそのように言葉を続けた。

「綺麗で、仕事もできて、モデルさんみたいな人?」

すると上林さんが吹き出した。

「それはいかにも、桐生部長が選びそうな人っぽいね。」

冗談めかして笑ってくれたことに、少しだけほっとした。

「桐生部長くらいだったら、芸能人とかと付き合っててもおかしくないですよね。」

「そうかな。」

部長はグラスを傾ける。

すると、上林さんが思い出したように言った。

「そういえば、一人いましたよね。モデルの子。」

――一瞬、場が静かになった。

私も思わず部長の顔を見た。
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