エンドロールは救いの詩を
その時の俺達は知らなかった。
俺達が2人で公園のベンチに座った同時刻に、俺たちの国にあるテレビやモニターが一つの中継映像に一斉に切り替わったコトを...。
その中継映像では1人のアナウンサーが話していた。
『この国の総理大臣が新たに決まりました。急ではありますが、新しい総理大臣の演説をお聞きください』
壇上に現れた1人の男。
クールな顔立ちの、厳格そうな雰囲気もある男だった。
真面目だった顔は、マイク前になると笑顔に変わった。
『皆様初めまして。この度総理大臣に就任したテツと申します。私はこの国を安全に、心地よく過ごせる場所にしたいと思います』
男ーテツは演説を続ける。
その様子を国民は見ていた。
『ここで皆様に見て頂きたい映像がございます』
テツがそう言った瞬間、テレビはテツが映る中継映像ではなく、どこにでもある道路の監視カメラと思われる映像が映し出す。
時刻は夕方頃で見にくい部分もあるが、何が映し出されているかはかろうじて分かった。
道路を1人の男が歩いている。
そして一台の車がその男をはねた。
紛れもない、交通事故の映像だった。
そして車にはねられた男は倒れ込んだ。
車は止まり、運転席から1人出てきた。
その人はキュースレーの存在であるコトが分かる白衣を着ていた。
キュースレーは男を一目見た後、何もせず車に戻り、何処かへ行った。
30秒程、倒れている男のみの映像が流れた後、また車が現れた。
そしてその車から降りてきたのは先程、男をはねたキュースレーと同一人物に見えた。
そのキュースレーは今度は男に駆け寄り、治療した。
そして男は回復し、治療費を支払う様子が見えた。
映像はそこで終わった。
テレビはテツが再び映し出された。
『皆様、この映像が意味するコトが分かるでしょうか?』
テツの前には記者達がいるが、テレビを見ている国民に問いかけていると思い、記者は何も言わなかった。
そして記者やテレビで見ている国民の中にもこの映像で何が起こっているのか分からなかった人も多かった。
『状況を説明いたしましょう。まず男性が車にはねられました。この車を運転していたのは白衣を着ていたコトからも分かるようにキュースレーです。そして車もキュースレーが使っている救急車であるコトが分かります』
そこで国民は改めて映像を思い出す。
車から出てきた白衣の人間の方に意識がいっていたが、確かに車自体が救急車であった。
『そしてこのキュースレーは瀕死の男性をほっといて、一度この場を去っています。そして再び来たキュースレーは事故を起こした当人。再び現れた時には治療をし、お金を支払わせています』
テツの言葉で状況が整理される。
そうなると、このキュースレーは自分で事故を起こし、自分で治しているというコトになると国民はここで理解した。
『キュースレーは自分達で怪我人を作り、自分達で治療をしていたのです。全ては自分達の金稼ぎの為に』
悪いキュースレーもいるのだなと国民は思った。
そして続くテツの言葉に聞き入る。
『私はこの映像の一件だけではなく、他にも多くのキュースレーが同様の行為を行なっているコトを確認しました。私達はキュースレーの奇跡的な力を信じすぎていたのでしょう...。このままではキュースレーに搾取される世界になってしまいます』
テツが言っているコトが正しいのか考えようとする国民もいた。しかしその国民達の思考はテツの次の言葉によって奪われた。

『そんな世界にするわけにはいけません。
よって、今ここにキュースレー排除を宣言します。
キュースレー自身、またキュースレーの居場所を知っている人は警察に身柄を差し出してください』

警察に身柄を差し出せという言葉に恐ろしさを感じる国民。
今この瞬間、キュースレーの排除が施行された。
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