すべての花へそして君へ③
【 君となくした空白 】
彼女が無事建物内にエスコートされるのを見送ってから、俺は車を走らせ丘を下っていく。
「……ふっ」
まだ百合ヶ丘を出て少ししか経っていないというのに、何度思い出し笑いをしたことだろう。
『シズルさんわたしね? 嘘って悪いことじゃないと思うんです。誰かのことを思って。誰かのために、吐くのなら。だから、そんなに嘘吐きが嫌なら突き通せばいいんですよ。大丈夫大丈夫! バレなきゃ嘘吐きだって誰もわかりはしませんから!』
――だから、一緒に墓場までもっていきましょう?
「……ははっ。あーほんと、君らって俺を笑わす天才だよ」
これ以上ない言葉をくれた君が。
……どうか、どうか。素敵な時間を過ごせますように。
「――あ。もしもし? 先日はどーも」