すべての花へそして君へ③
でもわたしは、どちらかというと好きなものは最後まで取っておくタチなんです。それがあるからこそ、それまでの過程も楽しいし、最後まで幸せでいられる。諦めないでいられると思うんですよね。
『君は……』
『後悔させませんよ。絶対』
『……君は、噂以上の変わり者だな』
『む。そうですか……?』
『ああ。清々しいぐらいには変わっているな。……懐かしい匂いだ』
『……? でも、結構お互い様だと思いますよ。わたしなんかに声かけちゃうくらいには』
『一緒にするな。自殺行為娘が』
『あら酷い』
「……で」
「ざっくり言っちゃえば、仕事の前倒しをしていました」
「もうちょっとざっくり」
「そうだね……。これは、前にカナデくんたちにも話したことあるんだけど」
わたしのしている仕事は、身が持たなくて、婚期が遅れて、普通にはできないことで……というかしようと思わないことらしい。
「んでいつも最終的には『一番、お前の仕事がラクで羨ましい』って言われます。なんでだろうね?」
「……」
「詳しい仕事の内容については、また後日に教えるよ。多分聞くより見た方が早いと思うから」
「……わかった」
ただ一言それだけを言って、彼はしばらく淡々と水を飲んでいた。怒らせて、しまっただろうか。
一度気持ちを切り替えようと思い、お手洗いに席を立つ。比較的明るい声で返事は返ってきたので、隠れてほっと安堵の息を吐いた。
(出すもの出したらすっきりした! うん、いろいろ溜め込むのはよくないよね)
流石にもう、わかっただろうな。わたしが、全部知っていること。わかってたこと。気付いてたってこと。
【その条件をのむ代わりに、私からも一つ条件を出そう】
君がつらいとわかっていて、気付かない振りをしたことも。見て見ぬ振りをしたことも。ずっと、苦しめていた自覚があったことも。
【――この件、一切の他言は無用とする。いいと言うまで、守り抜いてみなさい】
「……自分で蒔いた種だ。落ち込む資格ないよ。寧ろ胸張らなきゃ」