すべての花へそして君へ③

囁きが風花に溶ける頃


 山々が真っ白な帽子を深く被り始めた、ある日のこと。存分に楽しんだ修学旅行から帰ってきたオレたちはその時、命を懸けて、超難問の謎を解き明かしていた。


「どれも威力は桁違いだろうな」

「でも殺傷能力を考えると、一番生存率は高いんじゃないかな」

「やっぱり? オレもそう思うんだよね」


 ここは、以前にも来たことのあるショッピングモール内の定食屋。シフトは夕方からのようで生憎レンは不在だったが、レンがいる・いない関係なく、ここはここ最近のオレらの溜まり場になっていた。
 そして、厳重な話し合いの結果、満場一致で謎解きの答えはパーになった。


「てか、謎解きでも何でもねぇし」

「どうしたのこれ?」

「オレが聞きたい」


 不思議そうに、スマホとこちらを交互に見る彼らから、オレは思い切りそっぽを向いた。


「何拗ねてんの、ひーくん」

「拗ねてない」

「どう見たって拗ねてるだろ」

「拗ねてないって言って」


 けれど、むきになって否定したところで、余計拗ねていると思われるだけだ。


「……拗ねてないし」

「(これは結構……)」

「(いや、かなり重症だろ)」


 それでも否定したのは、拗ねているわけではなく腹が立っているからだった。


「それで? そろそろなんでアオイが学校来ねえのか、教えてくれんのか」

「それは、オレの口からは言えない」

「なんでだよ」

「あいつから直接聞きたいでしょ。それに、オレは全部を知ってるわけじゃないから」


 視線を落としたオレに二人は顔を見合わせ、小さく肩を竦める。


「でも、そのあーちゃんがいないし。連絡だって、入れていいのかわかんないのに」

「だからってオレに聞くの。オレだって知らないのに」

「だって他に聞ける人いないし」

「じゃあもしオレから聞いて、オウリはそれが真実だってどうしてわかるの」

「え? よくわかんないけど、そんなのひーくんが嘘つくわけないって、わかってるからに決まってる」

「ま、嘘はつかないだろうね。オウリが嫌いだったら話は別だけど」


 いい加減な返しに腹を立てたオウリは、こめかみに小さな青筋を立てた。


< 24 / 661 >

この作品をシェア

pagetop