すべての花へそして君へ③
囁きが風花に溶ける頃
山々が真っ白な帽子を深く被り始めた、ある日のこと。存分に楽しんだ修学旅行から帰ってきたオレたちはその時、命を懸けて、超難問の謎を解き明かしていた。
「どれも威力は桁違いだろうな」
「でも殺傷能力を考えると、一番生存率は高いんじゃないかな」
「やっぱり? オレもそう思うんだよね」
ここは、以前にも来たことのあるショッピングモール内の定食屋。シフトは夕方からのようで生憎レンは不在だったが、レンがいる・いない関係なく、ここはここ最近のオレらの溜まり場になっていた。
そして、厳重な話し合いの結果、満場一致で謎解きの答えはパーになった。
「てか、謎解きでも何でもねぇし」
「どうしたのこれ?」
「オレが聞きたい」
不思議そうに、スマホとこちらを交互に見る彼らから、オレは思い切りそっぽを向いた。
「何拗ねてんの、ひーくん」
「拗ねてない」
「どう見たって拗ねてるだろ」
「拗ねてないって言って」
けれど、むきになって否定したところで、余計拗ねていると思われるだけだ。
「……拗ねてないし」
「(これは結構……)」
「(いや、かなり重症だろ)」
それでも否定したのは、拗ねているわけではなく腹が立っているからだった。
「それで? そろそろなんでアオイが学校来ねえのか、教えてくれんのか」
「それは、オレの口からは言えない」
「なんでだよ」
「あいつから直接聞きたいでしょ。それに、オレは全部を知ってるわけじゃないから」
視線を落としたオレに二人は顔を見合わせ、小さく肩を竦める。
「でも、そのあーちゃんがいないし。連絡だって、入れていいのかわかんないのに」
「だからってオレに聞くの。オレだって知らないのに」
「だって他に聞ける人いないし」
「じゃあもしオレから聞いて、オウリはそれが真実だってどうしてわかるの」
「え? よくわかんないけど、そんなのひーくんが嘘つくわけないって、わかってるからに決まってる」
「ま、嘘はつかないだろうね。オウリが嫌いだったら話は別だけど」
いい加減な返しに腹を立てたオウリは、こめかみに小さな青筋を立てた。