すべての花へそして君へ③

 そんなことを考えていたわたしが、未解決事件の内容を知るのは、目の鼻の先だったりするのだけれど。


『先程、先に食べると言ったな』

『え?』

『一部訂正しよう。私も希に、好物は最後まで取っておく』

『……』


 僅かに、口角が上がる。


『前倒しの件、検討してやる』

『本当ですか!』

『ああ。最後の高校生活を味わわせてやろうとした、私の優しさを踏みにじるというんだろう』

『貴方の優しさよりも、恋人の気持ちが最優先ですから。それは貴方も同じでしょう?』


 目の前の人は、ふっと視線を下げただけだった。
 けれど、きっとこれは、同意の意思表示。


『その条件をのむ代わりに一つ、私からも条件を出す』

『何でしょうか』

『貴様、子どもは好きか』

『……はい?』


 ――――――…………
 ――――……


 子どもをお風呂に入れしばらく遊び相手をしていると、ちいさな子たちは少し眠そうな表情になってくる。わたしは、少し声を落として呼びかけた。


《お兄ちゃんお姉ちゃんたち》

《おふとん?》

《何枚しく?》

《もうすぐ寝る時間だから、ついでに全部敷いちゃいましょう》

《はーい》


 甲斐甲斐しくお手伝いしてくれる子どもたちにお礼を伝えて。今にも寝てしまいそうな子たちを抱え上げる。


《はい、それじゃあみんなでお手々繋ごうか》


 眠そうに目をこする子たちにも声をかけて。お布団組じゃない子にもお手伝いをお願いして。


《お兄ちゃんお姉ちゃん。お手伝いありがとう。あとはわたしに任せておいてね》


 綺麗に敷かれたお布団へ。小さな子どもたちを寝かせてあげる。
 カーテンが引かれた薄暗い寝室は、すぐに子どもたちを夢の世界へと誘ってくれる。


「シスター……?」

「ん?」

「今日は、お泊まりするんだよね?」

「……」


 可愛い子どもが大好きなわたしにとって、そんな寂しそうな瞳は一番の弱点だと言っていい。正直本気で断りづらい。
 けど、ダメだ。今日はこのあともいろいろ予定が詰まっている。何より予定が押したら押した分だけ、ヒナタくんとらぶらぶちゅっちゅできる時間が少なくなるのだ……!

 みんなにはまたいつでも会える。ここは一つ、心を鬼にせねば。


「もちろん。でも、おっきいお兄ちゃんに相談してからね?」

「……! うんっ! ありがとう!」


 とか言ってても、結局は甘いんだよなあと思う。そして心の中で謝る。ヒナタくん、ほんとごめん。


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