すべての花へそして君へ③

「う~~~ん」


 しかし、いざ教室に帰ってきても、わたしは腕組みをしているだけで、正直なところお手上げ状態。こんな、大きな可能性を掴んできてくれたというのかい、あなたたちは。


「どうしたの? アオイちゃん」

「あおいチャン、眉間に皺が寄ってるよお?」

「あ、おはよう。カナデくん、アカネくん」


 しかし、こればっかりはみんなに相談するわけにもいかない。わたしは洋紙を折り畳んで、それを静かにしまう。


「別に、隠すことねえだろ。俺たちも同じものもらってるし」

「……あ。ツバサくん」

「そうだぞー? こわ~い顔してたら、気になって仕方がないよ」

「キサちゃんまで……」


 そして、彼らは口を揃えて言う。自分たちに、何か手伝えることはないかと。


「……ごめん、そうだよね!」


 何故、隠そうとしていたんだろう。
 あのあと、彼らにもいろいろ話をしたんだ。わたしが今まで黙ってしてきたことを、こう……さらさらっと。ちゃちゃっと。はじめは呆れられたけど、でも今はこうして受け入れてくれている。わたしの話を、きちんと聞いてくれる。
 そんな素敵な友達は、貴重な相談相手でもあるのに、何を躊躇っていたんだろう。


「「「「………………」」」」


 結果、みんなの眉間に深い皺ができた▼

 広げて見せたのは、まあいわゆる選択肢。理事長とキク先生が探してきてくれた、わたしの未来の可能性。
 その掴んできた可能性が、異常に大きくて非常に重いのだ。やっぱりみんな、同じような顔になっちゃうよね。


「一つの発言が、アオイちゃんの未来を決めてしまう」

「いやいやいや! そんな重く考えないで!?」

「考えるなって方が無理だろ」

「まあそうなんだけどさ……」


 机の上に広げられた二つの選択肢。

【朝日向初女社長への後援】と【警察関連の仕事補助】

 ……重い。重すぎるぜ。


「どうしてこうも、あおいチャンに課された課題はいつもいつも大きいんだろお」

「それについては、積み重ねてきたものが違うからではないかと」


 こうなってしまう気はしていたけれど。


「あっちゃんならきっと大丈夫。ちゃんと見つけられるよ」

「キサちゃん……」


 でも、みんなに聞いてもらったら、それだけで気が楽になった。


「……うんっよし! わたし、ちょっと出てくるね!」

「え。あ、あっちゃん!? 式もうすぐよ!?」

「大丈夫大丈夫! それまでには帰ってくるからあ!」


 紙を手に取り、教室を飛び出す。行き先はもちろん――あそこだ。


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