すべての花へそして君へ③

『……俺は』

『どうだ? ちょっとは考えてくれる気になったか』

『俺にも、理由があります』

『……理由?』

『どうして、……こんな恰好をしてるのか』

『……』


 それはまるで、どこかの誰か。彼を見ていると、まるでその誰かを見ているみたいだった。
 大切な妹という存在を、……誰かに必死に伝えているような。


『……言ったろ? 腐った卵』

『……』

『それから、絶対に逃がさねえって』

『……まさるさん……』

『聞いてやるよ、お前の分。……俺の分、聞いてもらったからな』

『……はい』


 ――――――…………
 ――――……


『その気になったら、いつでも掛けてこい』


 彼とそんな話をしたのが、つい最近のように思い出せる。
 あんなことを聞いたんだ。俺でよければすぐ力に……なれればよかったんだけど。だからこそ引き受けられなかった。

 自分のことでいっぱいいっぱいで。誰かのことに力を貸せるほど、あの時の俺にはまだ、余裕がなかったから。


「だから、さっさと違う人捜したらよかったのに。しばらく来ないと思ってたら、まだ俺のこと諦めてなかったんですねしつこい」

「最後は余計」

「しつこいしつこい超しつこい」

「呼び出してきたかと思ったら、そんなこと言うためかコラ」

「すみませんつい。決して、担任に写真送り付けたこと根に持ってるとかじゃないですから」

「よく撮れてたろ」


 この人は、どうしていつもそんなに自信たっぷりでいられるんだろう。結局は、にやりと笑ったその顔に反論はできないわけだが。


「これでも一応プロだから。お前がその気になりゃいつだって」

「優さん」

「……? どした」

「教えてください」

「何を」

「優さんが、これからどうするつもりなのか」


 コーヒーに砂糖を入れる手がぴたりと止まる。俯く彼の表情は前髪で陰り、はっきりとはわからない。けれど、流石にいい気はしていないみたいだった。


「……あの兄ちゃん、余計な真似してくれやがって」

「でも、教える気がないわけじゃないんですよね」

「まあな。俺にも段階ってのがあんだよ」

「そうだったんですね。いつも猪張りに猪突猛進だったので、自分の欲望の赴くまま、何も考えてないんだと」

「こっち側来たら、否が応でもいろいろ知るだろうし」

「……どういう、ことですか」


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