すべての花へそして君へ③
「ええ~いいじゃん。勿体振らないで教えてよ~」とどこか楽しげな彼女に、気付かれないところでほっと息を吐く。
よかった、引かれたんじゃなくて。よかった、あおいがオレのことベタ惚れで。……よかった、あおいがバカで。
「ていうか、オレの部屋で何してたの」
「ん? いやね、そろそろ模様替えしとかないといけないなーっと思って」
「……それで、クローゼットの、奥の奥の、そのまた奥の方に頭突っ込んだわけ」
「したらばさ、なんかちっちゃい金庫みたいなのが出てきて」
鍵が掛かってたけど、わたしの誕生日入れたら開いたんだよねーって。なんでちょっと得意げなのあなたは。
前にも、同じように部屋を荒らされたことがあったけれど、あの時は一つの探し物に集中してたし、中を開けても見向きもしなかったんだろう。
「それでさ、ヒナタくん。これってもしかして」
「……うん。オレの罪」
それは、まだ彼女を助ける前の話。隠し撮りしておいた写真や動画、それから録音。
「てっきり、もうないんだとばかり思ってた」
「全部はないよ。本当に、ほんの一部だけ、ね」
その中には、過去あおいに憑依していたモミジとの会話も、いくつか残っている。それを処分してしまうのは、まだ心が痛くて。
「そっかそっかー」
「……嫌じゃ、ないの」
「え? なんで?」
「だって、……知らないところでこんなもの残されてたから」
「嬉しかったよ。すごく綺麗に、とっててくれたから」
「……あおい」
にこっと、本当に嬉しそうに笑ってくれる彼女に、心が救われる。愛しい彼女がバカで、本当に本当によかった。
「今度さ、よかったらわたしにも見せてくれる?」
「もちろん。……また、一緒に見よう」
無事、危機から脱出。
実は、この他にも彼女の知らないところでたくさんの隠し撮りデータを保管しているのだが……それは、また追々。趣味は、一人で味わう時こそ一興だもんね。