すべての花へそして君へ③
自分を奮い立たせること早20分。みんなの言葉に勇気づけられ、帰ってきた。帰ってはきたものの、玄関の前で立ち往生していた。この扉を開けるのが、ここまで怖いとは。
「あれ? ヒナタくん帰ってたんだ」
「うおっ」
そうこうしていたら、何故か後ろから彼女の声が。振り向くと、「……魚?」と相変わらずおバカに可愛く首を傾げている。
「ふふ。今ビクッてなった。ビックリした?」
「……家の中にいると、思ったから」
「起きたらヒナタくんいないんだもん。書き置き見たけど全然“少し”じゃないし」
「……ごめん」
「待ちくたびれちゃった。どこに行ってたの?」
「……これ」
後ろから来た彼女には、きっと見えてたんだろうし。そう聞いたところで答えは何となくわかってたんだろう。
手に持っていたそれを、そっと彼女に渡す。
「お花だ」
「……まあ、やっぱり記念日だし」
「わざわざ買いに出てくれたの?」
「……まあ、そんなとこ」
そう答えたオレに、「……そっか」と彼女は眉尻を下げながら控えめに笑みを浮かべた。
「あの、あおい…………さん」
「……? どうしたのヒナタさん?」
「……怒ってる?」
「……うん」
(わ。マジか)
「だって、せっかく一緒に過ごそうと思ってたのに。いないし。遅いし。連絡つかないし」
「ご、ごめん」
「お花も。……何もいらないって言ったのに」
あ。どうしよう。本気で怒ってる。拗ねてるこの人。
……何やってんだオレは。
「違う、ごめん。そうじゃなくて」
「……? そうじゃないって?」
「この花は、記念日だからとか関係ない。口実に、さっき買ってきた」
「……口実?」
彼女の声が瞳が、不安げに少し揺れる。そんなことを言われると思っていなかったんだろう、しかも昨日は記念日だ。けどそれは、オレだって一緒。
だから、一人で不安がってたって、答えを聞くのが怖いからって、逃げちゃダメだ。
「オレが、何かしたんなら謝る、から」
「……え?」
「謝るし、オレができることで返せるなら、精一杯返すから」
「……ヒナタくん?」
「だから、……別れるとか、言わないで」
「え? うん」
「……え。別れない?」
「え。なんでそう思ったのか教えてよ逆に」