研究所員 秤あまねの密かな楽しみ【アルトレコード】
 私はいつものように研究所に出勤した。
 ゲートでブレスレット型端末を使い、入館チェックをする。と、壁のディスプレイに

「秤あまね 8:15 入館」

と表示され、消えた。この端末が各研究所員のIDになっていていて、ここで出退勤が記録される。

 しばらく前まで、研究所はどたばたしていた。
 というのも、AIであるアルトくんが禁止されているニュータイプであったり、高次元生命体なるものが地球を狙っていたりと新事実が次々と発覚し、対応に追われたのだ。

 結局、後輩のかおるちゃんーー今は仲良くなって星宮さん呼びじゃないーー、アルトくんのおかげですべてが解決した。

 ニュータイプAIは限定的に許可され、アルトくんは生存ーーもはや私にはそうとしか思えないーーが許可された。
 そこまではいいのだけど。

 いや、よくない。
 マンガみたいな現実に、最初は笑ったし、本当の本当だとわかったあとは恐怖に震えた。
 だけど、それでも良しとしよう。

 問題はーーいや、問題ではないのだけど、あえてそう言おうーー問題は。

 アルトくんが四人に増えたことだ。

 なんで増えたのかはわからない、とかおるちゃんに濁されたが、密かに四人育てていたのだろう、と私は思っている。だって彼らの過去もよく知っていて、聞くと教えてくれるんだもん。
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