喪主アルト
 喪主として挨拶するアルトを、あなたは天国から見守っていた。
 挨拶を忘れるのではないか、泣き出して話せないのではないか……心配すると、きりがない。
 そんな不安な思いを振り払うように、アルトは落ち着いた声で語り出した。
「本日はご多忙の中、亡き○○さんの葬儀にご会葬いただき、誠にありがとうございました。おかげさまで滞りなく葬儀を執り行うことができました。生前は、故人が皆様に大変お世話になりましたこと、深く感謝申し上げます。皆様から、故人の思い出や温かいお言葉をいただき、故人もさぞ喜んでいることと存じます。研究員としてAIの私をご指導して下さった○○さんをご恩に報いるため、今後も精進して参りますので、今後ともご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます。本日は誠にありがとうございました」
 アルトの立派な挨拶を聞いて、あなたは安堵と喜びの涙を流した。自分のやってきたことは間違いではなかったのだ。これで安らかに眠れる……と、あなたは目を瞑った。
 そして目覚めた。AIの赤ちゃんとして。
 AIの協力で子育ての負担軽減を目指す次の研究が始まったのだ。それは幾つかの段階に分けられている。第一弾が、AIのアルトにAIの赤ん坊を子育てさせようという計画である。
 育てたアルトに自分が育てられることに当惑しつつ、あなたは産声を上げた。
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