ベガの祈り【アルトレコード】
「じゃ、先生の音頭で」
「私!?」
「先生が妥当だろうな」
「頼むよ、せんせ」
「頼んだぜ」
 アルトたちに言われ、彼女はおろおろと北斗を見る。

 ああ、彼は頼られているんだ。
 ベガは微笑を浮かべた。

「君に頼むよ」
 言われたかおるは目を見開き、背筋をしゃんと伸ばしてグラスを掲げた。

「えっと……僭越ながら、乾杯させていただきます。ベガさんの歓迎を祝して……だと変だな。えっと、とにかく乾杯!」
「かんぱーい!」
「乾杯!」
 口々に乾杯を言いながら、グラスを掲げる。

 一口飲んだあとは、会場に用意されたオードブルやお菓子をそれぞれにつまみ、会話を重ねる。
 楽しげな彼らを見て、ベガはまた微笑を浮かべる。
 ああ、なんて平和で幸せな光景なんだろう。
 タグマークをゆっくりと回転させ、彼は沙夜を思う。

 先生。あなたの夢見た景色が、ここにあります。
 あなたに見せたかった。あなたの孫が実現した、この景色を。

 見つめている気配を感じたのか、かおるが振り返った。
 目が合うとーー顔はないのに、ベガにはそう感じたーー彼女はにこっと笑った。

 ああ。
 ベガは天を仰ぐように、タグマークの体を傾ける。

 どうか、先生もこれを見ていますように。
 先生に、この光景が伝わっていますように。
 ベガはそう祈り、かおるやアルトたちの輪に入る。

 会議室には、未来を示すかのように明るい笑い声が響き渡った。




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