一匹オオカミ君と赤ずきんちゃん
「獅童君、どうしたの?」
「なぁ、コイツってさ……」
導かれるように私も視線を落とすと、そこには可愛らしい猫がちょこんと座っていた。
「わー、かわいい――って、この子、どこかで見たような……」
足許の猫をそっと撫でてみる。
嫌がる様子も無いのでそのまま抱き上げると、獅童君が興味深げに私の腕の中を覗き込んだ。
「一回り小さいが、顔つきも模様もあの巨大な猫とそっくりだぞ、こっちが本物って事はないのか?」
ミステリードラマに登場する探偵のように、獅童君は可愛らしい猫に疑惑の目を向ける。
その様子に、陽華ちゃんは健やかに笑った。
「似ていて当然、親子だもの」
「親子……?」
獅童君が不満そうに言うと、肯定するように猫が鳴く。
甘えるような可愛い声。
野良である事が心配な程、細くて優しい声。
この声、どこかで――。
猫の声なんてみんな同じように聞こえるかもしれないけれど、私はこの声を知っている。
「あ! この子、さっき駅前の公園で会った子だ!」
私の閃きに、再び可愛らしい鳴き声を上げる猫。
獅童君は神妙な顔つきで私と猫を交互に見つめる。
「そう言えば、俺が鈴ちゃんに声かけた時、猫、逃げてったよね? もしかして……」
「う、うん、たぶん、この子だと思う」
「マジか、俺が声をかけてなかったら、もう少し早く会えてたのか」
獅童君は顔を顰め、ガックリと肩を落とした。
陽華ちゃんは含み笑いを浮かべると、
「そうね、そしたら私に殴られる事も無かったわね」
肩をグルグル回し、獅童君を挑発する。
確かに、公園で獅童君に声をかけられなければ、猫探しはあっという間に解決していただろう。けれど、そんな最短ルートを辿っていたら、大神君と獅童君は仲直り出来なかったし、私も獅童君を誤解したままだった。
それに何より――。
「それならまぁ、声かけて良かったか……」
獅童君は陽華ちゃんを見つめ、ポツリと呟く。
「――え?」
「優牙と腹割って話せたのは、お前のお陰だと思ってる……ありがとう」
気恥ずかしそうに言ってそっぽを向く獅童君。
陽華ちゃんの目が点になる。
「えぇ!? 急に何!?」
「いや、まぁ……」
照れ臭そうに背中合わせになる二人。
この二人の出会いが無かった事にならなくて良かった。
後は二人で仲良くね。
私は猫を抱いたまま大神君の元へ向かう。
どんな風に声をかけるべきか悩んでいると、抱いていた猫が勢いよく腕から飛び出し、大神君の足許に舞い降りた。
「あ、えっと――」
勢いのまま当ても無く話し出すと、大神君がゆっくりと私を見上げる。
ときどき見せる優しい笑顔とは違う、晴れ晴れとした穏やかな微笑。
その瞳は、赤く潤んでいた。
「なぁ、コイツってさ……」
導かれるように私も視線を落とすと、そこには可愛らしい猫がちょこんと座っていた。
「わー、かわいい――って、この子、どこかで見たような……」
足許の猫をそっと撫でてみる。
嫌がる様子も無いのでそのまま抱き上げると、獅童君が興味深げに私の腕の中を覗き込んだ。
「一回り小さいが、顔つきも模様もあの巨大な猫とそっくりだぞ、こっちが本物って事はないのか?」
ミステリードラマに登場する探偵のように、獅童君は可愛らしい猫に疑惑の目を向ける。
その様子に、陽華ちゃんは健やかに笑った。
「似ていて当然、親子だもの」
「親子……?」
獅童君が不満そうに言うと、肯定するように猫が鳴く。
甘えるような可愛い声。
野良である事が心配な程、細くて優しい声。
この声、どこかで――。
猫の声なんてみんな同じように聞こえるかもしれないけれど、私はこの声を知っている。
「あ! この子、さっき駅前の公園で会った子だ!」
私の閃きに、再び可愛らしい鳴き声を上げる猫。
獅童君は神妙な顔つきで私と猫を交互に見つめる。
「そう言えば、俺が鈴ちゃんに声かけた時、猫、逃げてったよね? もしかして……」
「う、うん、たぶん、この子だと思う」
「マジか、俺が声をかけてなかったら、もう少し早く会えてたのか」
獅童君は顔を顰め、ガックリと肩を落とした。
陽華ちゃんは含み笑いを浮かべると、
「そうね、そしたら私に殴られる事も無かったわね」
肩をグルグル回し、獅童君を挑発する。
確かに、公園で獅童君に声をかけられなければ、猫探しはあっという間に解決していただろう。けれど、そんな最短ルートを辿っていたら、大神君と獅童君は仲直り出来なかったし、私も獅童君を誤解したままだった。
それに何より――。
「それならまぁ、声かけて良かったか……」
獅童君は陽華ちゃんを見つめ、ポツリと呟く。
「――え?」
「優牙と腹割って話せたのは、お前のお陰だと思ってる……ありがとう」
気恥ずかしそうに言ってそっぽを向く獅童君。
陽華ちゃんの目が点になる。
「えぇ!? 急に何!?」
「いや、まぁ……」
照れ臭そうに背中合わせになる二人。
この二人の出会いが無かった事にならなくて良かった。
後は二人で仲良くね。
私は猫を抱いたまま大神君の元へ向かう。
どんな風に声をかけるべきか悩んでいると、抱いていた猫が勢いよく腕から飛び出し、大神君の足許に舞い降りた。
「あ、えっと――」
勢いのまま当ても無く話し出すと、大神君がゆっくりと私を見上げる。
ときどき見せる優しい笑顔とは違う、晴れ晴れとした穏やかな微笑。
その瞳は、赤く潤んでいた。