ラストランデヴー
「みどり……」


「私、田島部長と堂々と恋をしたいです。普通の恋人がするデートもしてみたいし、田島部長のおうちにも行ってみたい」

 クスッと笑う声が聞こえてきた。途端に私の顔は真っ赤になる。

「嬉しいよ」

 そう言って彼は私の左腕をつかみ、銀色に光るリングを私の薬指にはめた。

 私の指にすんなりと馴染むシンプルなデザイン。

「これは……?」

「俺の愛と勇気の結晶。みどりにあげる。いらないなら捨てていい」

 信じられない言葉が彼の口から飛び出す。

 この1年間、心の奥底でひたすら求め続けたものが、私の薬指でキラキラと輝いていた。

「何があっても絶対捨てません」

 私は思わず左の薬指を右手で押さえた。田島部長は楽しそうにクスクス笑う。

「じゃあ明日、うちにおいで。両親に紹介するから」

「え? えええーっ!?」

「ごめん。言ってなかったよね。俺、実家に住んでて、気軽にみどりを連れて行けるような状況じゃなくてさ」


 私はいったいどこまで思い込みの激しい人間なのだろう。

 そして決死の覚悟で別れを告げた私の勇気はいったいなんだったのだろう。


 情けないやら、恥ずかしいやら、それに気が抜けてホッとしたせいか、おかしくて仕方がなかった。

 涙を流しながら笑う私に、田島部長は優しいキスを落としていく。額に、頬に、鼻の頭に、唇に……。

 そのたび私の心にポン、ポンとターコイズブルーの傘が開いた。

 雨の日の憂鬱を吹き飛ばしてくれるように、と選んだ爽やかな緑がかった青色。しのいでくれるのは冷たい雨粒だけではなかったと今になって気がつく。

 あの傘、今はどこにあるのだろう。

 今度実家に戻って探してみようと思った。

 もちろん、そのときは彼と一緒に――。



◇ END ◇
< 17 / 17 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:25

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

One Night Lovers

総文字数/40,474

恋愛(純愛)72ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
人生最大の失恋をして 憂さ晴らし&いい男探しに 避暑地へやって来たルリが出会ったのは…… ダメ男!? 「いくらなんでもあれはない」 そう思ったはずなのに なぜか一夜の恋に落ちてしまった!? *ムーンライトノベルズ掲載
すべて奪って、感じさせて

総文字数/1,445

恋愛(オフィスラブ)4ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
彼は上司――。 デキる男は他人にも厳しい。 彼に憧れる私は、いつもミスのないよう心がけていた。 彼に認められたくて。 彼の気を引きたくて。 なのに……
どうしてほしいの、この僕に

総文字数/229,181

恋愛(純愛)245ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
はじまりは、一通の招待状だった。誰が送ってくれたのかわからないけど…… ひそかに女優を夢見る柴田未莉(みり)のもとに 差出人不明のオーディションへの招待状が届く。 しかしそのオーディションで若手演技派イケメン俳優、守岡優輝に 最悪のひとことをぶつけられた! それから未莉は意外な形で彼に近づくことになり ……奇跡or運命の恋が始まる!? 演技派イケメン俳優に翻弄されながらの、恋の個人レッスン! *2025/07/12 【番外編】君が知らない僕のことなど(前・後編)掲載 *カクヨム他にも掲載中です

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop