ラストランデヴー
 私は取り返しのつかない発言をしてしまったことに今さら気がつく。


 頭上で大きなため息が漏れた。

「バツイチでなければ、みどりは俺を好きになってくれたかな?」

「……ごめんなさい。私、本当にひどいことを……ごめんなさい」

「あやまらなくてもいいよ。本当のことだし」

 何度も首を横に振った。すると頭の上に大きな手がポンと置かれた。

「みどりは俺のことを好きなんだよね。さっきあんなに泣いてたのは、本当は俺と別れたくないからでしょ?」

「……それは……」

「このひと月、わざと連絡しなかったんだ。みどりを試すために」

「試す?」

「俺に会いたいと思ってほしかったから」

 そう言って田島部長は私を抱き寄せた。

 彼の腕の中で私は数度まばたきする。身体がふわふわとして夢を見ているような気分だ。

「俺の気持ちを押しつけるようにして始まった関係だから、みどりが俺のことをどう思っているのか、ずっと知りたかった。もし俺を少しでも好きだと思ってくれるなら、バツイチだとか会社の上司だとか、そういうこと全部抜きにして俺を見てほしい」

 私は田島部長の胸に頭を預け、少しの間考える。

 もうここから出たくない。このぬくもりを失うくらいなら身体ごと溶けてしまいたい。

 感じることはそんなことばかり。


 つまり、私は――。


「無理です。私が恋をしたのはバツイチの上司だから」
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