欲望のシーツに沈む夜~50のベッドの記憶~
2、ホテルの鍵を開けたのは、彼の指
残業、ふたりきりの夜
残業は、好きじゃない。
仕事とプライベートは、きっちり分けたいタイプ。
時間内に終わらせて、さっさと家に帰って好きな紅茶を淹れて、ドラマを見るのが日課だ。
でも――今日に限って、それは叶わなかった。
「ごめんな、西原。他に残業できる人がいなくて」
私を引き留めたのは、他でもない一ノ瀬課長だった。
「大丈夫ですよ。早く終わらせちゃいましょう」
そう笑って答えたけど、内心はちょっとだけ複雑だ。
なにせ今日の残業内容は、“資料100部のコピー”。
深夜ルートまっしぐら案件だった。
だけど私は、課長に頼まれたことが嬉しかった。
一ノ瀬課長。冷静で的確で、部下に無駄口を叩かない人。
だけど、時折ふっと見せる優しい目元や、真剣に考えごとをしている時の指先の動き――。
そういう全部が、私にとっては“憧れ”だった。
仕事ができる人になりたい。課長みたいに。
そう思い続けて、気づけば入社して5年が経っていた。
仕事とプライベートは、きっちり分けたいタイプ。
時間内に終わらせて、さっさと家に帰って好きな紅茶を淹れて、ドラマを見るのが日課だ。
でも――今日に限って、それは叶わなかった。
「ごめんな、西原。他に残業できる人がいなくて」
私を引き留めたのは、他でもない一ノ瀬課長だった。
「大丈夫ですよ。早く終わらせちゃいましょう」
そう笑って答えたけど、内心はちょっとだけ複雑だ。
なにせ今日の残業内容は、“資料100部のコピー”。
深夜ルートまっしぐら案件だった。
だけど私は、課長に頼まれたことが嬉しかった。
一ノ瀬課長。冷静で的確で、部下に無駄口を叩かない人。
だけど、時折ふっと見せる優しい目元や、真剣に考えごとをしている時の指先の動き――。
そういう全部が、私にとっては“憧れ”だった。
仕事ができる人になりたい。課長みたいに。
そう思い続けて、気づけば入社して5年が経っていた。