欲望のシーツに沈む夜~50のベッドの記憶~
コピー機のリズムに合わせて、私は次々に刷り上がる資料を受け取り、手際よくページを揃えていく。

その隣で、一ノ瀬課長が無言でホチキスを打ち続ける。

何も言わなくても呼吸が合って、私たちの連携はまるでチームのようだった。

「はい、次の束、お願いします。」

「……了解。」

課長の声はいつも通り低くて落ち着いていて、それだけで少し安心する。

資料の山が少しずつ積み上がっていく様子に、妙な達成感を覚えながらも、ふと課長がぼそりと呟いた。

「あーあ。なんで明日までの資料、誰もやってないんだよ……」

呆れたように顔をしかめる課長の横顔を見て、私は思わず口を開いた。

「すみません。私も、誰かがやると思ってました」

「それが“残業の元”なんだよな」

課長は少し不機嫌そうに言ったけれど、その声にとげはなかった。

不思議なことに、こういう時でも彼は決して人を責めたりしない。
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