欲望のシーツに沈む夜~50のベッドの記憶~
不満を口にしながらも、自分が率先して動くタイプ。

部下のミスも、結局は自分の責任として受け止めてしまう。

それが、私にとっての“課長らしさ”だった。

無口で、ぶっきらぼうで、でも不器用なほど優しい人。

そんなところが――私は、好きだった。

無意識に見上げたその横顔が、いつもより少し近くに見えて、

私は胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じていた。

「すみません、トナー替えますね」

そう言って私がコピー機のカバーを開けようとした瞬間、「俺がやるよ。」と課長の声が重なった。

ふたり同時に手を伸ばし、指先が触れた。

一瞬のことだったのに、肌が電気を帯びたみたいにじん、と熱くなる。

「……あ。」

課長もわずかに息を呑む気配がして、私たちは同時に手を引っ込めた。

沈黙が落ちる。でも、空気は静かにざわめいていた。

視線がぶつかるたび、胸が高鳴る。

ほんの一瞬。けれど、確かに“意識してしまった”――そんな空気が、そこにあった。
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