欲望のシーツに沈む夜~50のベッドの記憶~

シャツの奥、熱に溺れて

静かなホテルの一室。

カーテン越しの灯りが淡く揺れていて、ベッドの上に落ちる影が、まるで心の奥を映しているようだった。

「先にシャワー、どうぞ。」

高瀬さんはそう言って、私にバスタオルを手渡してくれた。

気遣う声も手の温度も、どこまでも優しかった。

シャワーを浴び終えると、彼は私の濡れたシャツまでドライヤーで乾かしてくれていた。

「これで風邪ひかなくてよかったですね」

そう言って笑う高瀬さんに、私はそっと頷いた。けれど――。

「でも……なんだか、熱っぽいです。」

シャツを受け取りながらそう呟いた私に、高瀬さんが顔を近づける。

「紗良さん……?」

見つめ合う視線の中に、何かが灯るのを感じた。

私はもう、躊躇えなかった。ゆっくりと、彼の唇に自分の唇を重ねた。

静かで、でも確かに熱を孕んだキス。

唇が離れたあと、高瀬さんが言った。

「……熱っぽいね。やっぱり。」

「高瀬さんのせいです。」

私がそう答えると、彼の目が驚きと嬉しさに揺れた。

「俺……?」

「もうこの病、高瀬さんしか治せそうにありません。」

囁くように言うと、彼は微笑んで、私をそっと抱き寄せた――。
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