私の中にあるモノ
その日の夜。

私はベッドに潜り込んだものの、まんじりともせず、膝を抱えていた。

…時刻は、もうすぐ日付を越える。

武藤くん達が、脱走の計画を実行に移す時間だ。

約束通り、私は誰にも、彼らの計画のことを口外していなかった。

だからきっと、誰にも見つからず、ヘリコプターを奪取出来るはずだ。

…どうか成功しますように。

研究所の職員達には悪いけど。

私は、武藤くん達が脱走に成功することを、心から祈っていた。

もし彼らが脱走に成功して、それが研究所の他の竜人達にも伝われば。

それはきっと、シンクロ率という寿命を抱える彼らにとって、希望になるはずだ。

私達にも…籠の鳥にも、飛び立つ権利があるのだと。

そして純粋に今は、私は武藤くんにも、芦田さんにも、ムダナちゃんにも、死んで欲しくなかった。

あの3人だけじゃなくて、脱走に参加した全ての成功検体達に、生きて欲しかった。

せめて、外の世界を見るまでは…。



…すると、その時。



「…!」

外の廊下から、何やら騒がしい音が聞こえ始めた。

私は反射的に、ベッドから飛び起きた。

バタバタと、職員が走り回る音。

それに、何やら大きな声を出して怒鳴り合うような、そんな声も聞こえた。

明らかに、緊急事態が起きたのだ。

…それじゃあ…。

いよいよ、武藤くん達が決行したのだ。

…居ても立ってもいられなかった。

私はベッドから抜け出して、自分の部屋を飛び出した。

廊下の窓に飛びつき、外の様子を伺おうとした。

残念ながら、窓から見えるのは中庭の景色だけで、ヘリポートは見えない。

それでも、ヘリが飛び立つところは、ここからでも見えるかもしれない。

…しかし。

「っ…」

この窓からは、何も見えなかった。

ただ、遠くでサーチライトのような光が、ちらちらとしているだけだ。

…駄目だ。ここからじゃ見えない。

どうなったんだろう、武藤くん達は?

無事に逃げ延びられたら、



…その刹那。


ドンッ!!…という、金属と金属がぶつかるような、凄まじい爆音が響いた。
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