愛しのマイガール
翔真さんと付き合っていたこと。
突然、名乗りを上げてきた“婚約者”の女性。
そして、私にはまったく身に覚えがないまま告げられた慰謝料の話。
話しているあいだ、自分の声がわずかに震えているのがわかった。
けれど止められなかった。言葉を吐き出すことでしか、私は自分を保つことができなかった。
そしてすべてを語り終えたとき、
「……状況は理解した」
ハルちゃんの声が、落ち着いた調子で響いた。
「悪質だな。個人で抱えるには荷が重い」
「……そう、かな」
「ああ。それにその婚約者の名前には聞き覚えがある。おそらく《《こちら側》》の人間だ。素人が戦える相手じゃない。それに弁護士を立ててきたってことは、相手は本気でるりを潰しにきてる。……そっちがそのつもりなら」
ハルちゃんは、まっすぐに私を見据えた。
「俺が信頼してる弁護士を紹介する。うちが米国で高級ホテルの土地取得トラブルに直面したとき、代理人として的確な対応と交渉力でプロジェクトを成功に導いた男だ。……動きは早い方がいい。今日中に連絡をつけて、明日には動かせる」
「……ほんとに?」
思わず、声が震えた。
救われる。そんな気がした。けれど同時に、信じられない気持ちもどこかに残っていた。
「……ありがとう、ございます。でも……どうしてそこまで」
「敬語はやめてくれ」
「え? でも……」
昔とは、あまりにも立場が違いすぎる。今のハルちゃんは、私なんかが簡単に話しかけられるような人じゃない。
それでも、私の戸惑いをよそに、ハルちゃんは淡々と続けた。
「その代わり、一つだけ交換条件がある」
その一言で、私は思わず背筋を伸ばした。