愛しのマイガール
「こういう事態は一時的な避難だけじゃ済まない。るりが安心して暮らすためには、環境ごと変える必要がある」
「環境……?」
「今の生活も仕事も、全部いったんリセットするんだ。しばらくの間は、こっちに来てほしい。……俺の“婚約者”として」
「……! こっ、婚約者!?」
思わず、声が上がった。
けれど、ハルちゃんは小さく頷いて、まっすぐに私を見ていた。
「ど、どうして、いきなりそんなこと……」
「理由が必要なら、話そうか」
その声には、どこか優しさが滲んでいた。
「覚えてるか? 昔、君が言ったこと。——『ハルちゃん、わたしがおおきくなったら結婚して!』って」
「…え……」
「他でもない、るりがそう言ったんだよ」
その言葉に、ハルちゃんをまとう空気が、ほんの少しだけ和らいだ気がした。
「そ、そんな昔の約束…、あれは、ただの子供のたわごと、で、」
動揺して、言葉がまともに続かなかった。
でもハルちゃんは軽く首を振って、ふっと小さく笑った。
「たしかに、子供の頃の無邪気なたわごとだったかもしれない。でも俺にとっては大切な思い出だ。ずっと覚えてる。だから今、ここでその約束を果たしてもらいたい」
「……え?」
「あの時の俺の返事。“いいよ”って、そう言っただろ?」