愛しのマイガール
今私は、モデルの仕事は休んでいる。
万が一のことがあったとき、表に立つ仕事で迷惑をかけるわけにはいかないと思ったから。
勤めていたクリニックも、一身上の都合で退職した。
正式な理由は誰にも言わなかったけど、もしも慰謝料のことがバレてしまって孤立するのが怖かった。
何より、月城グループの後継者である彼と一緒に生きるなら、もう以前と同じようには働けないと思ったから。
あの日急に私を襲った出来事は重く、でも確実に、私の生活を塗り替えていった。
「あの…だから私、こういう場は初めてで、ハルちゃんの隣で…こ、婚約者として、どう立ち回ったらいいか、教えてもらえないかな?」
気恥ずかしさと不安の混ざった返事に、ハルちゃんは近づいてきて静かに言った。
「無理に完璧を演じなくていい。今日のるりに必要なのは、堂々とすることじゃない。俺の隣にいること——それだけで、十分だよ」
そう言って、ハルちゃんは背中に回る。
「え?ハルちゃん何して…」
「そのままじっとしてて」
静かな声が、すぐ耳元に落ちる。
次の瞬間、彼の指先がそっと私の鎖骨のあたりに触れた。
ひんやりとした感触。
小さなジュエリーボックスから取り出された細くて繊細なチェーンが、私の肌に滑り落ちる。
「……これ……」
「お守りみたいなもの。今日だけじゃない。これからの君を、ちゃんと守れるように」
ハルちゃんの手が、私のうなじで留め具をそっと繋ぐ。
その動作はとても繊細で、まるで私を壊れ物みたいに扱っているみたいだった。