愛しのマイガール

今私は、モデルの仕事は休んでいる。
万が一のことがあったとき、表に立つ仕事で迷惑をかけるわけにはいかないと思ったから。

勤めていたクリニックも、一身上の都合で退職した。
正式な理由は誰にも言わなかったけど、もしも慰謝料のことがバレてしまって孤立するのが怖かった。

何より、月城グループの後継者である彼と一緒に生きるなら、もう以前と同じようには働けないと思ったから。

あの日急に私を襲った出来事は重く、でも確実に、私の生活を塗り替えていった。

「あの…だから私、こういう場は初めてで、ハルちゃんの隣で…こ、婚約者として、どう立ち回ったらいいか、教えてもらえないかな?」

気恥ずかしさと不安の混ざった返事に、ハルちゃんは近づいてきて静かに言った。

「無理に完璧を演じなくていい。今日のるりに必要なのは、堂々とすることじゃない。俺の隣にいること——それだけで、十分だよ」

そう言って、ハルちゃんは背中に回る。

「え?ハルちゃん何して…」

「そのままじっとしてて」

静かな声が、すぐ耳元に落ちる。
次の瞬間、彼の指先がそっと私の鎖骨のあたりに触れた。

ひんやりとした感触。
小さなジュエリーボックスから取り出された細くて繊細なチェーンが、私の肌に滑り落ちる。

「……これ……」

「お守りみたいなもの。今日だけじゃない。これからの君を、ちゃんと守れるように」

ハルちゃんの手が、私のうなじで留め具をそっと繋ぐ。
その動作はとても繊細で、まるで私を壊れ物みたいに扱っているみたいだった。


< 44 / 200 >

この作品をシェア

pagetop