キミに伝えたいことは。

私とりのちゃん

もうずっと昔の、幼稚園児だった頃。
自分で言うのはあれだが、私は今とは別人のような子だった。友達はたくさんいて、毎日楽しかった。ずっと笑顔だった。
その理由は、一人でいる子にどんどん話しかけて言って行ったから。
人と関わることが苦手でもなかった。ただ、ぽつんと一人でいるのが可哀想だった。
それを繰り返してたら、友達が多くなった。人気者になった。なろうとしたつもりもなかった。だけど、嬉しかった。
5歳くらいの時。ある女の子が一人で寂しそうにしていた。みんなその子の顔を見るとすぐにぷいっとそらしてしまう。
いじめている訳じゃない。昔の私には分からなかった。今ならわかる。彼女の顔、容姿だろう。
高嶺の花すぎて、無意識に離れていた近寄り難い子だった。でも、そんな彼女のことが気になって仕方がなかった。
ある日、ついに私は先生に
『せんせー、あのこのなまえってなにー?』
と、聞いた。ここの幼稚園は、人が多くて、小さい私には全員の名前は覚えられなかった。
『あのこ?あのこはね、"りのちゃん"って言うのよ』
『へぇーりのちゃんかぁ。かわいいね』
名前を聞くだけのつもりだった。だけど……

『ねぇねぇ、りのちゃん』
話しかけてしまった。
『な、なぁに?』
顔も知らない私に、頑張って返事をしてくれた。
『ひとりでさみしくないの?』
りのちゃんはこの言葉に反応した。図星だったようだ。
『うん……さみしい』
『じゃあ、あたしとあそぼ!きょうからともだちだよ!』
『えっ、でも……』
『おかあさんがいっかいはなしたらおともだちっていってた!』
『……!よろしくね』

この日が、私とりのちゃんとの関係の始まりだった。
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