宵の月、秘めたる契り―帝に愛された二人の女御―
「私の娘、詠子はいかがでしょうか。」

その声には、誇りと計算が込められていた。

笑顔の奥にある思惑を、帝もまた感じ取っていた。

左大臣・公衡――朝廷の柱のひとつであり、太政大臣に次ぐ重鎮。

その顔を立てることは、政の安定に欠かせぬこと。

帝は目を伏せ、扇をそっと開いた。

――朕は、綾子を妃としたいだけなのだが……

その想いと、帝としての責務が、またしても心の中でせめぎ合っていた。
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